“この暗闇を鐘楼となし、汝自身を鐘とせよ
その音が響きわたるとき
汝を打つもの 汝自身の強さとならん”
ジョアンナ・メイシーが大切にしているライナー・マリア・リルケの詩。実際のところ、ジョアンナにとってのリルケの詩は、「大切にする」という表現ではあらわしきれないように思うのだけど、それはまた別の機会に書くとして…。
わたしは今、安倍元首相の銃撃事件に少なからぬ衝撃を受けています。
わたし自身は安倍政権下のほとんど全ての政策や方針に違和感を感じ、同意も支持もしなかった。「森・加計・桜」やその他たくさんの大切な法案について、嘘に嘘を塗り重ねる姿勢にも激しい怒りを感じていた。
そして今、銃撃→とりあえずの幕引き、という形でこのモヤモヤが雲散霧消してしまわないかがとても気になっている。
これから日本はどうなっていくのだろうか…
愛する人たちが暮らす日本という国の未来。
暗闇も希望の光も、ともに目にしながら、不穏な心でこの手紙をしたためています。
だからこそ今、ここで、このリルケの詩の一節を、あなたと分かち合いたいと思います。
***
Quiet friend who has come so far,
はるかに来たる静かな友よ
feel how your breathing makes more space around you.
Let this darkness be a bell tower
and you the bell. As you ring,
君が呼吸をする度に、周りの世界が広がりゆくのを感じてごらん
さあ、この暗闇を鐘楼となし
君自身を鐘となせ その鐘の音(ね)が響く時
what batters you becomes your strength.
Move back and forth into the change.
What is it like, such intensity of pain?
If the drink is bitter, turn yourself to wine.
君を打つものが君の力となる
行きつ戻りつ変化を見据えて
いかなるものか それほど強烈な痛みとは?
その飲み物が苦ければ 君自身をワインに変えよ
In this uncontainable night,
be the mystery at the crossroads of your senses,
the meaning discovered there.
箍(たが)の外れた宵闇の中で
君のもつあらゆる感覚を交じりあわせてあの謎に自らを開け放せ
求めた意味はそこに見つかる
And if the world has ceased to hear you,
say to the silent earth: I flow.
To the rushing water, speak: I am.
そうしてもしも世界が君の声に耳を塞いでしまったなら
声なき地球に言うがいい わたしは巡り流れると
ほとばしる水に告げるがいい わたしは在ると
(オルフォイスへのソネットII, 29)
Rainer Maria Rilke Sonnets to Orpheus Ⅱ, 29
英訳 by Joanna Macy and Anita Barrows
***
わたしの心のど真ん中をに真っ直ぐに射抜くのは
Coming Back To Lifeにも掲載されているこの言葉。
“この暗闇を鐘楼となし
汝自身を鐘とせよ。その音が響きわたるとき
汝を打つもの 汝自身の強さとならん”
どうか、あなたのその声も
そしてわたしのこの声も
鐘の音となって響き渡りますように…
2022年7月 第26回参議院議員選挙の投票日に